独白するユニバーサル横メルカトル:平山夢明(光文社文庫)
まずはこちらのデータを見てもらいたい。
これは僕の読書メーターに登録されている作家、多い順ベスト10だ。
このデータから分かることは喧嘩稼業11巻を登録し忘れていることだ。あとで追加しておかなくては。金隆山康隆と川口夢斗の対決は、一撃の火力があるが故の緊張感がすさまじく、本気でどちらが勝つか最後まで分からない名勝負だったので、是非一巻から読んでもらいたい。
喧嘩稼業は喧嘩商売という漫画の続きなのだが、喧嘩稼業から読んでも問題はない。もちろん、トーナメントに参戦している闘士たちの背景が分かった方がもっと面白いので、kindleで発売されている十六闘士セレクションを買うこともよいかもしれない。全八巻。全部合わせても432円で買える。432円で喧嘩稼業の予習ができる。しかも熱い。読むしかない。読もう。
じゃない。喧嘩稼業の紹介じゃあない。タイトルが違う。喧嘩稼業は素晴らしいけど。
閑話休題。閑話休題。
さきの画像からも分かるように、僕は西尾維新を一番読んでいる。ほぼ全部読んでいる。
読書メーターに登録してないのも勿論ある。でも読んでる。ディオの日記のやつ含む。
その次に読んでいる作家は、平山夢明だ。
平山夢明。
鬼畜系であり、キチク系。
実話怪談の王。
「あなたと会ったら体を壊す!」と言われている人。
キチガイにエンカウントする確率が高すぎて、キチガイホイホイなのではないかと疑われている人。
今回はそんな平山夢明の小説をおススメしよう。
『独白するユニバーサル横メルカトル』
2006年の日本推理作家協会賞短編部門賞を受賞した短編が、表題作の短編である。
実話怪談の王なのに推理作家協会賞? と首を傾げる人も多いだろう。しかし『とある「タクシードライバー」が女性客を乗せたことをきっかけに、シリアルキラーとして覚醒する話』だと言えば、傾げた首がもとに戻り、ぽんと手を叩くことになるだろう。推理作家協会賞短編部門賞であり、決して「ミステリー小説」だとは言っていない。まあ、普通にミステリーしているので、そこのところは安心してほしい。殺戮にいたる病だって、ミステリーしてるだろう? あれと一緒だよ。あと語り部は地図帳だ。ユニバーサル横メルカトル方式の地図だ。
収録作は。
『C10H14N2(ニコチン)と少年 ――乞食と老婆』
『Ωの聖餐』
『無垢の祈り』
『オペラントの肖像』
『卵男《エッグマン》』
『すまじき熱帯』
『独白するユニバーサル横メルカトル』
『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』
そんな短編が表題作なのだから、この短編集はミステリ風味の短編が多いのかと言えばそうでもない。どちらかと言うと、SFが多い。次に多いのはサイコホラーだ。あと人情ものとヒューマンドラマ。平山夢明はなんでも書けるタイプの作家なのである。
じゃあ器用貧乏なのかと言えば、そうでもなくその全ての作品には共通点がある。
彼は、キチク系なのである。(カタカナなのは、嫁さんが『私は鬼畜の嫁なの?』と泣いたので、できればカタカナにしてほしい。って話をしていたから)。日本で三指にはいるキチク。いやーな話を書くのが得意なのである。そこまで得意になるといやーな話だけど大爆笑できるやつもあるし、いやーな話なのに涙が止まらない感動系とかも普通に書けるし、いやーな話だけど着地は綺麗だし読み心地はとても美しく「あれ僕、君系の小説読んでたっけ?」ってなるやつも結構あるのである。キチクが苦手な人にこそお勧めしたい、キチクを書くのがうまい男。矛盾した作家である。
『C10H14N2(ニコチン)と少年』は、彼が”大人”になっていく物語。大人って皆性格悪い。
『Ωの聖餐』は理論の証明を願う元数学者の物語。死体処理用の死体を食べるデブが賢いんだ。
『無垢の祈り』は不遇からの脱出を願う少女の物語。ただし願う相手は殺人鬼。”あいたい””あいたい””あいたい”。
どれもこれもに味付けの塩みたいにふりかけられたキチクがほどよく物語を気持ち悪く彩ってくれる。それを僕は愛してやまない。なぜなら気分が悪くなる嫌な話は、僕は大嫌いだからだ。
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