映画『ジャックはしゃべれま1000』

 さあ金持ちから金と地位と名誉を奪った上で「金で解決できないものはあるんだよ」と諭す映画の始まりだ。確かに金で解決できないものはあるし、言葉だけでは伝わらないものもあるけれども、別に金と地位と名誉を奪う必要はない。でも作劇上一回奪っておいた方が盛り上がるので今日も金持ちは金と地位と名誉を奪われる。あとで返してあげようね。

 おしゃべりなジャックは仕事も順風満帆。家庭も子供が産まれたばかり。出版社のエージェントをしているけれども、本を売ることを第一に考えているため最初と最後の五ページしか読まない。そんな彼が次に狙ったのはスピリチュアル。怪しい宗教団体。ちょっとウケるのは、この怪しい宗教団体。最後まで怪しい宗教団体のままだったこと。別になにもしてないけど、自分のおかげで救われたんですよ感を出している。怪しい。石とか売ってきそう。そもそもジャックを呪ったのはその宗教団体のご神木だし……。

 ご神木の呪いによって一単語喋るごとにご神木の葉っぱが落ちて、全てが落ちきったら死んじゃう羽目になったジャックは、あっちこっちで様々な問題を巻き起こし、金も地位も名誉も家族も失ってしまう。やっぱご神木のせいじゃん。

 『どうぶつの国』って漫画があるんですけど、それに登場するギラーって男は、自分の特殊能力によって財産と地位を手に入れた父親が家族に優しくなくなってきて、だから「地位も名誉も財産も全てが無意味になったとき、人は初めて純粋な愛に目覚めるんだ!」と父親を刺し殺したんだけど。多分ご神木も同じ感情で呪ったんだろうね。刺す前に目覚めさせろ。

 それでもジャックは、言葉を失ったことで、言葉では伝えられない本心を知っていく。いや、普通に言葉で伝えていたので別に言葉では伝えられない本心なんてないのかもしれない。クソみたいなご神木が勝手に家に生えてくるクソ迷惑コメディの方が正しいのかもしれない。エディーマーフィーに喋るなってなかなかキツいことをさせるね。

サメとゾンビと空伏空人

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