映画『HUMAN LOST 人間失格』

 まさか太宰治も自分の遺作が「全人類、失格」というキャッチコピーのもとSFアクション映画になるとは思うまいよ。

 「結構アクションが良い3Dアニメがあるんだよ。太宰治が原作なんだけど」みたいな言葉が使える時代。面白い時代になりましたね。
 どことなくデジャヴを感じる人間失格であるが、なんだっけと思ったらアニゴジだった。制作会社も声優陣もだいたい同じだもんな。なんなら「人が滅ぶべきか、化物が滅ぶべきか」みたいな話の流れも似てる(これは言いがかり)。なんか、地味だったね。アニゴジ……。

さて本作は人間失格を大胆にリメイクした(大胆すぎませんか?)SFアクション映画になっている。「恥の多い生涯を送ってきました……へん、しん!」みたいなノリで変身する。デザインは結構好き。でもなんか東映版スパイダーマンの前口上ぐらいの意味の無さを感じる変身セリフだった。恥の多い生涯、よく知らないから……。

 内容は人間失格をふんわりとなぞっていはいるけれども、どちらかと言えば、『いらすとやの少子高齢化の画像の映画化』と言われた方が納得のいく感じの内容だった。120歳を超える年齢まで生きれるようになった近未来。彼らと若者がインターネットを介し「同期」することにより、「長生きで健康的な体」をみんなで共有し、みんなで健康になった世界。だからこそ、老人たちを敬わなければならないものの、彼らの若者時代に築いた負の遺産によって、若者たちはガスマスクをつけないと生活できないぐらいの環境と、1日19時間労働を課せられていた。

 こんな状況を打破したい! じゃあどうする。ジジババを皆殺しだー! という、インターネット過激派みたいな敵と戦うのが、「HUMAN LOST 人間失格」である。しかしまあ、なんというか「元々あった原稿を結構はしょった?」と思う部分が結構あって、昭和111年という舞台設定は背景に特に反映されてなくて、なんか普通のビルが建ち並ぶ街並みで(なんなら劇中レインボーブリッジが出てくるんだけど、あれ完成したの平成5年だから、平成の建築物じゃあない? まあ、昭和からつくってたからいいのか?)、1日19時間労働は19時間労働をしているシーンがまるでなく、なんなら「19時間働いててつらいわー」とスナックでゆっくり話しているので「本当に19時間働いてた?」と疑問がわくところがある。ヒロインである声が花澤香菜の女との関わりもはしょられている気がするし、ん、んん~? と思えるところもあった。「健康的なジジババと同期する」っていう健康法、どちらかと言えば老人が若者の元気取ってない? とか、「体が壊れたときはナノロボットが治してくれる」という設定があるのでジジババと同期しなくてよくない? とか、まあ、色々……。

 まあ、それはそれとして変身ヒーローのデザインはいいし、アクションも良いやつなので、アニゴジの幻影がちらちらしない人やちらちらしちゃう人も一回観てみてもいいんじゃあないだろうか。人間失格原案ってことは一回忘れろ

サメとゾンビと空伏空人

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