トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦

 俺は一目惚れを一番純粋な恋だと信じているし、今書いてるラブコメも好きになることに時間は関係あるか? って話をしてるんだけど、この映画を好きになったタイミングは床に散らばってるガラス片に拳を擦りつけて、ドリアンの拳をつくった瞬間ですかね。

 九龍城砦を舞台にしたカンフーハッスル。

 ちまたにはヘイトコントロールとかいうシケた言葉が存在するが、九龍城砦にいる人間を好きになるまでの速度がめちゃくちゃはやかった。

 主人公の友達三人組がいるんだけど、ひとりは九龍城砦に来たときに出会ったし、ひとりもそれぐらいに出会ったやつで、ラストひとりは出会いのエピソードが「人がひとり多い気がするんだけど顔を隠してるから分からねえな……」で、主人公が出会ったというよりは、道を歩いてたら隣にいたぐらいの距離感の出会いだったのに、一瞬で仲良くなっているし、俺もこいつが友達だったら楽しいだろうなあ。とたらし込まれていたのでスゴい良い奴だぜ。映画館で笑い声が聞こえるのは、きっとこいつは好かれてるんだなと分かって俺も嬉しかったよ。友達が褒められてる気がした。

 兄貴の龍を好きになったタイミングはきっといくつかあるんだけど、九龍城砦の隙間から主人公をちらっと見ているところからかもしれない。龍の兄貴はいつだって九龍城砦にいるお前たちを見ている。金を稼ぎたくて裏の賭け事ファイトに参戦するような奴だけど、お金を稼ぎたいだけだから普通の仕事を与えたら普通に仕事をしてくれるお前のことも見ている。

 俺は金が必要なんだよ! という奴でちゃんと普通に働くやつを始めて見たかもしれない。

 この映画はカンフーを明らかに信用している。カンフーハッスルぐらい信用している。

 どのキャラも明らかに強い理由が功夫になっている。ひとりにいたっては「硬直!」で刃物も体を通さなくなっている。映画が終わって隣の観客が「硬直! から明らかに変になったよね」と言っていたが、いや、龍のねじりの効いた拳もまあまあ変だっただろう。でも硬直! が一番変だったのはそうだと思うよ。でも皆受け入れてたから気功って奴はすげえんだと思うぜ

 消えゆく定めの九龍城砦を舞台に、老いは消え、新世代が台頭する。しかし老いは決して時代遅れだから消えたのではなく、バチバチに輝きながら継承を重ねて消えていくのである。

 おおよそ8割がガチガチカンフーハッスル。おおよそ2割が人たらし。風が吹いたとき、登場人物よりも先に「龍…!」となれたのは良い映画体験だったと思う。

サメとゾンビと空伏空人

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