セーヌ川の水面の下に

 なんか、久々にサメ映画を観た気がする……。
 決して、質の悪いサメ映画が増えたから、奴らのことを認めねえぞっていう意味ではない。単純に、観ていないの意である。
 フランスのセーヌ川が舞台のサメ映画。確か2年前に公開された『シャーク・ド・フランス』がフランス初のサメ映画だから、これが2作目になるのだろうか。どうだろうか。

 素直な感想としては「『ディープブルー』だ……」みたいな映画だ。

 ディープブルーって知ってる? 明らかに人を狙って襲いに来るサメの元祖みたいな映画なんだけど、今作のサメも明らかに人を襲いに来ている類のサメだ。今となっては人を襲うことを当たり前としているサメだけど、昔は「それはちょっと…」みたいな謂れがあったらしいよ。俺は昔の人じゃないからよく知らないけど。

 環境保護活動をしていた主人公のチームはある日、データ採取していたサメに襲われる。そのサメは明らかな突然変異種で、数ヶ月で3倍の大きさに成長していた。

 数年後、突然変異種のサメはなぜかセーヌ川に侵入していることを、若き環境保護活動家が突き止める。

 どうでもいいけど、最近の映画は犬に優しくて環境保護活動家に厳しいよね。別に良いけど、新たなテンプレを感じる。

 この映画の特徴としては求めていることを達成してくれるという点がある。

 なんかこいつ死んでいいんじゃあねえかな……と思った奴はちゃんと死ぬし、明らかにエサ枠だよな……と思った奴らもエサになる。

 しかし、環境保護活動家の広報で集まった数十人にも及ぶ若者達を観たときは「いや、この量はさすがに多くないか……?」って思ったんだけど、ちゃんと食べてくれる。空伏さん、知ってますか。満漢全席っていっぱい食べれるから最高なんですよってサムズアップしてくれる。

 ここではやはりディープブルーのオマージュも見せてくれるところも加点ポイントだ。

 満漢全席を食べた突然変異のサメが遺した『子供のサメ』によって、このサメが大量の子供を産み、すぐ育つ異常繁殖種であることが分かる。つまり、親と子のサメがセーヌ川に現れる『ディープブルー2』ということだ。『ディープブルー2』はそんな観なくてもいいです。

 トライアスロンが行われるセーヌ川で、主人公達は異常種のサメをどうにか駆除しようと試みるが……という部分は雪富千晶紀の『ブルシャーク』って小説を想起する。静岡県の人口湖にサメが迷い込むという小説なんだけど、こうしてみると日本もまだまだ負けてないかもしれませんね。ちなみにこの作家は他にも『死と呪いの島で、僕らは』『ALIVE 10人の漂流者』『ホワイトデス』というサメ小説を刊行している。なんて?

 まあしかし、この映画の話をするならラストシーンの話をしないといけないだろう。ネタバレになるから絶対に口にはできないけれども、ここまでのタイトル回収と映像の美しさ、いいか。人を襲う類のサメのやる気を舐めるんじゃねえと言わんばかりの圧巻さと外連味を全て放出されてしまうと、人は自然と拍手をしてしまう。俺はお前のことを好きだと言わないといけないかもしれない。最高のサメです。

サメとゾンビと空伏空人

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