『ハロウィンKILLS』
ハロウィン、邦題にする際にそのままカタカナにする類のタイトルなんだけど、キルズはカタカナにしなかった。『ハロウィン キルズ』はダサいという判断なのかもしれない。『ハロウィン キル』だったらわんちゃんあるかもしれない。どうだろう。
ところでどうして『KILLS』なのかと言えば、なんかめちゃくちゃ殺すからである。なにせ冒頭11人殺している。平均的スラッシャーホラーのラストキルデス比を冒頭で済ませてくれる。
前回ラストで面白トラップハウスで捕まったが(隠し部屋、自動シャッター、檻は落ちて火炎放射器が家を燃やす)脱出を果たしたマイケルは、さながら久我重明な立ち姿で消火活動に来た消防士たちと相対する。
いつものスラッシャー映画ならば火事の被害者だと思って消防士たちが駆け寄ってきそうなものだが、マイケルは久我重明みたいな立ち姿で待ち構えているもんだから「分かるよ、猛者《きょうしゃ》だろう……きみ」みたいなノリで消防斧《マスターキー》を構える。
マスターキーならまだ『自衛』である可能性はあるけれども、丸鋸のエンジンかけた時点でそれはもう『ぶっ殺してやる』って意味なんだよ。まあ普通に負けて死ぬんですけど。
マイケルがいつものように人に出会ったら殺して人に出会ったら殺してを繰り返していると、マイケルのことを知っている住人たちは「あんの野郎、マジで許さねえぞタダじゃおかねえぞ。ぶっ殺してやるからな!」と自警団をつくりだしてマイケル探しを始める。
本作は特徴として『殺される側の殺意が妙に高い』というところがある。
それは、スラッシャー映画の弱点である『シリーズを重ねたところで、やることが基本的に「殺人鬼→被害者」であることから、どうしてもマンネリ化が避けられず、殺人鬼がトンチキなものへと変化していく』というものがあるんだけど、本作はそれを『じゃあ「殺人鬼←被害者」にすればいいんじゃね?』という解をぶつけてきた。
観終わったあとは「いやあ、この構図は新しいかもしれないなあ」と思っていたけど、少ししてから『13日の金曜日 PART7 新しい恐怖』ってそういう構図だったな。と思いだした。新しいって難しいね。
アメリカ人はとりあえず「USA! USA!」言っておけばなんか一致団結して、ホワイトハウスにだって突入していく人種じゃあないですか。今回は「悪は滅ぼせ!」と言って一致団結してマイケルを殺そうとする。
「住人たちが協力してマイケルをぶち殺しに行くが、マイケルも負けてねえぜ!」みたいな構図になるとばかり思って期待していたところがあるんだけど、今作で描かれているのは『恐怖に狂う人間たち』なので、結果として「住人たちが協力してマイケルをぶち殺そうとするけどテンションが高まりすぎてマジで関係ない人を殺して、それはそれとしてマイケルは全然関係ない場所で普通に殺人を繰り広げている」ということになっていて、なんというか。「マイケルの実在性を信じてキレる住人世界」と「マイケルのことなんて全く信じてなくて普通に暮らしてる住人世界」があって、マイケルはずっと後者の方で殺しを続けて、前者はなんか勝手にキレてるか、たまに接続する。という感覚があるんだよね。「悪を滅ぼせ! マイケルを殺せ!」と騒ぎ立てられている中、めっちゃ普通に扉を開けて外にでたり家の中で遊んでたり、凶悪な殺人鬼が確実に町にいるとは思えない無防備さがある。自警団、結成してやったことが『無駄に煽った』ぐらいだったね。
まあでもラストのマイケルVS住人たちの「闇討ちして明日の試合に出れないように社長に言われたチンピラたちVS自分が覆面レスラーであることに誇りがあるタイプのレスラー」みたいなバトルとか結構楽しかったのでかなりお気に入りの映画です。芸術的に演出して凶器ありのステゴロ殺人バトルをしてくれるマイケルはかなり殺人鬼のなかでも良いやつです。
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