映画『地獄でなぜ悪い』
久々に映画が観れるのでなにを観ようかしらんと考えて、園子温監督の映画を見つけたので観る。地獄でなぜ悪い。主題歌は星野源。PVを観に行くと、多分彼らは映画を観に行っていない……と思われるコメントを見ることができる。
園監督といえば『冷たい熱帯魚』が一番有名だろうけれども、俺は『みんな! エスパーだよ!』とか『リアル鬼ごっこ』の方がかなり好きな監督。やっすい血がしゃかしゃかぶんぶんバカみたいに出るコメディが楽しいよね。
そんなわけで今作もそちら側というか、だんぜんコメディである。
娘を映画の主演にしたい奥さんのために、ヤクザのお父さんは娘を主演にした『本当の抗争を撮影した映画』を撮ることにした。それに巻き込まれる星野源。映画の知識がない星野源。どうしようかと逃走する星野源。マジで偶然たまたま出会ったのは、傑作を撮れるなら死んでもいい。と豪語する『書かないワナビ』の具現化みたいな映画撮影班。彼らは抗争を映画に仕立てるために相手方のヤクザとも打ち合わせを重ねて映画の撮影=ガチモンの抗争に臨む。
星野源の存在意義はどこにあるのか暫く考えたけれども「撮影班」「抗争ヤクザ」以外でストーリーラインを築くためには、一人男が必要であったということだろう。あるいはコカインで決まっている星野源が撮りたかったか。俺ならどっちもかな……。
首が飛び腕が刎ね血が噴きしぶる抗争の中でも、ライトが消えてしまえば「カット」の一声で止まり、目の前の相手との勝負も「カット」「はい、お疲れ」と一息つき、カメラが回れば決めポーズ。地獄の光景であるはずなのにみんな笑ってふざけてどこか「架空《フィクション》」であると頭が思い込んでしまっている。でも人は死んでんだよな。それでいいのかな。まあ、いいじゃあない。映画の中ならば、人が死ぬのは楽しいんだからさ。「やっぱり映画を撮影しているんですよ」「やっぱり映画じゃあないのか」
現実と仮想がぐらぐらと合わさってしまったせいで、皆殺し合いしているのにどこか楽しそう。ここは地獄の三丁目よとあはははは笑いながら首が飛ぶ。ホラーコメディとかあくありき。という感じの良い映画だったね。オチは全員死ねば終わりよ! と言わんばかりの雑さなので、そこのところも安心。
地味に副読本として主題歌の『地獄でなぜ悪い』は採用してもいい気がする。無駄だ。ここは元から楽しい地獄だってね。嘘でなにが悪いんだ。嘘だからこそ首を刎ねてもピースはできるし、無駄に血の海をつくれるし、頭に刀が突き刺さっても普通に歩けるし、銃弾の雨あられを食らっても走れるんだ。
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