映画『それ それがやって来たら…』

 世間的に失敗作とされる映画を観るのがいいよ。という話だったので、世間的に明らかに知られていないだろうし、観る前から失敗とされてそうだなと思われてそうなやつを観た。『それ それがやって来たら…』国語の先生に怒られそうな文章だ。ツイッターだったら三点リーダは偶数だろう! と怒られる。ITをそのまま日本語にしたらそりゃそうなるよ。

 内容としてはボーイスカウトに来た子供と付き添いのお姉さん(元SKE48とか)が謎のピエロに襲われる。以上である。謎のピエロが出てくるまでに三十分ぐらい時間がかかって(上映時間は64分)、序盤は箸をきちんと持てない子供が腹を壊すか、『面白いギャグを言えます!』とすべっている時間が過ぎていく。松井先生もやめとけって言ってたじゃん。

 ピエロは子供を全員、ちゃんと殺してくれるところはポイントが高い。殺す方法は手に持ってるぶっといナイフで刺す。普通に刺す。思ったより普通に刺すし、一仕事したなあ。と汗を拭う。死ぬためにキャンプに来た子供たちは、今の時代そんな露骨なまでのツインテールしている子供もいないのでは? という疑問や、いじめっ子いじめられっ子の関係性が特に進展するひまもなく一網打尽にされる。わざわざ子供を五、六人ぐらい用意したのに一網打尽にするの? もったいなくないっすか?(いっぱいの犠牲者をいっぱいの方法で殺すのが人殺しの役目では?)

 良いところの話をすると、森や洞窟の中でめちゃくちゃ反響する甲高い声の女が出ている。喋るたびにすごいやまびこするのでちょっと楽しい。YouTubeやってるみたいなので見にいったら思ったよりもアバンギャルドな風貌になっててめちゃくちゃ笑った。動画の髪を染めているところの目の純朴な光にさらに笑った。目を見開いていないときは純朴な光。

 この映画自体、まあお金もかけられてなくて、シナリオも『人殺しが人を殺す』というこの世で一番シンプルなシナリオで、これで失敗するのはムリだよ。成功するとは限らないけど。ぐらいの立ち位置。決して面白くはないけど、つまんないと一蹴するほどでもない。別に欠点があるわけではない映画なので、観るのに苦痛はないよ。64分の映画だし、暇だなぁ。どれ、観てみるか……ぐらいの感覚で観ればいいんじゃあないでしょうか。当たり障りのない、ひな壇芸人がたまにリアクションをするYouTube動画をひたすら再生し続けるバラエティ番組みたいなもんですよ。

サメとゾンビと空伏空人

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