地球は女で回ってる

 ポスターを拡大して見てみたら、「毎日誰かを愛したい……」と書いてある。別にそんなシーンはない。そんなに愛に飢えている感じもないので、どうして不倫をしてたんだろうと思うばかりである。不倫をしているということは愛に飢えているということではないでしょうか? なるほど……。

 こういうなんか意味ありげな、しかし話の内容とはまるで関係のない邦題をみたとき、さては原題はかなりさらっとしているな? と思うのは「『名もなき塀の中の王』現象」と俺の中で呼ぶと今決めたのですが(名もなき塀の中の王の原題は「Starred Up(重罪の少年犯罪者を、成人用刑務所に収監するシステムのことらしい)」)、地球は女で回ってるの原題は『DECONSTRUCTING HARRY』である。意味は「ハリーを脱構築で分析する」とかになるのだろうか。こっちもよく分かんねえな。脱構築っていうのは「既に定まっているなにかを解体して新たな構築を目指す」というか、「置き時計を解体して腕時計を構築します!」みたいな、そんな意味っぽい。いや、よく分からんが……。

 映画の内容は「人気作家だが、人間関係構築がめちゃくちゃヘタクソで周りの人を参考にして小説のキャラクターを書いているもんだから、『お前そんな風に見ていたのかよ!』ってキレられる主人公の小説の内容を見ながら、彼がどんな人か見てみましょう」と言った感じ。小説を解体することで、作家のひととなりを構築する脱構築? いや、よく分からんが……。

 

これはユダヤ教にどっぷり浸かったお姉ちゃんと2番目の妻を合体させた小説のキャラ。なんでもかんでも捧げる。

 これはずっとピンボケしているロビン・ウィリアムズ。U-NEXTがずっとピンボケしているロビン・ウィリアムズに注目! とアピールしていた。

 そんなこんなで周りに怒られ続けて、創作と現実の区別がつかなくなって、創作物が話しかけてくるようになったり、最終的には逮捕されてしまったり、自分に好意を持っていたらしい女は別の男と結婚したりと散々な主人公だったが、創作物たちだけは彼のことが好きだと言ってくれた。キャラクターたちは悲しくて滑稽だけど、作者も気づかないような喜びを見せてくれるのだ。

 ラストにはこの物語のテーマはね。と、ちゃんとテーマを語ってくれる。語ってくれるので「じゃあ映画を観なくてもいいのでは?」という気持ちにもなる。
 なんていうか、この映画は「人生、人それぞれだよね!」で終わるんだけど、人それぞれだよね! って終わりなのか……? という疑問がふつふつと湧く映画だった。「人それぞれだよね!」って言いだす悲しい男。という終わりとして考えるなら、まあ……。まあ?

 なんていうか、こう、ずっと頭にクエスチョンマークが浮かび続けるタイプの映画だった。なんか言いたいことはあるんだろうな。なんなら言いたいことを口に出してすらいるんだけど、その「言いたいこと」と「言動(この場合、映画のストーリー)」があんま噛み合ってないような。疑問。ずっと疑問。脱構築って言葉の意味はこれであってんの? ぐらいの疑問が頭にありつづける。そんな映画。

これは人生で5番目ぐらいに言われたくない言葉

サメとゾンビと空伏空人

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