ビンゴ
山田悠介である。知ってる? 無知だねえ。皆知ってる作家だよ。
原作は読んでいるんだけど、大体30ページか40ページかぐらいの短編で、少なくとも一時間半ぐらいの映画にするには内容が足りない。
原作の内容はまあ普通にネタバレ込みで話すと「人間ビンゴに参戦して、十三回連続でビンゴから外れたら死刑免除だけど普通に死刑に選ばれて死んだ」っていう短編なんだけど(普通に選ばれて死んだってなんだよって思うじゃん。本当に普通に選ばれて死ぬから。読んでみてよ。『ブレーキ』っていう短編集に入ってるから)、ページ数と内容量、どちらも絶対に99分に足りない。じゃあどうするか。原作改変ですよ。邦キチでもこの前、山田悠介原作の『ライヴ』って映画が紹介されてた。最初のセリフは『ライヴ』の「主人公の家族を人質にとった謎の人物が『ライヴ』の原作小説を送りつけてきた時」のセリフなんだけど、『ライヴ』ももちろん、かなり原作改編が入っている。原作が『謎の病気が蔓延する現実世界で、ワクチンを手に入れることが出来る鉄人レースに参加する主人公。なお、鉄人レースは当然のように人を殺しに来るデスレースである。なんでと言われても殺しに来てるから仕方ないのである』みたいな小説なんだけど、映画は『そんな小説をヒントだと渡され、家族を人質に取られた主人公達がデスレースに参加することになる……』という作品になっている。これはもう原作改編なのだろうか。
山田悠介作品は結構「理由は不明だけど、とにかく人が死ぬ環境に主人公達が投げ込まれる」という小説が多くて、だからそれを映画等の別媒体の作品にするとき、よく「人が死ぬ環境」の説明が付加されることが多い。しかし、そもそもが「本当によく分からないけど人が死ぬ環境」なので、説明を足されたところで、よりトンチキさが際立っているところがある。『ライヴ』はそもそもトンチキさに振ってるので別問題です。
本作は「死刑になる死刑囚を人間ビンゴで決める」の部分に、「誰が死刑になるべきか選ぶ一般人」という要素が足されている。陪審員制のような感じにしたんですね。でもやることが人間ビンゴである理由は分かりません。こっちに理由をつけてくれよ。
ちなみに主人公以外の死ぬ死刑囚たちはわりとちゃんと罪状が最低なので(強姦して殺して豚に食わせた男とか)、普通に死んだところでそりゃそうだろとしかならないし、帰っても良い『投票する側の一般人』が死刑囚より数が多くなりだすと「なんでお前らここにいるの!?」ってなる。意味深な顔をしている奴はなんだったんだよ。帰れよ。なんで死刑囚人間ビンゴに真剣なんだよ。帰れよ。
死刑囚人間ビンゴに振り回されるけど、死刑囚人間ビンゴがなんなのか結局分からない。原作の要素が1番分からない不思議な映画、それが『ビンゴ』。俺は原作を中学生ぐらいの頃に読みました。
この映画できみはボブという死刑囚がなんで死刑になったか気になって仕方なくなるし、豚に食わせた男の被害者の父親が「でも彼を調べると本当に死刑にしていいのか…って気持ちが」とか言いだす時に「なにを知ったらその感情になれるの!? 豚だぞ!?」ってなると思います。俺はなりました。ボブ、お前はなにしたんだよ。なあ。原作にいなかったぞボブ。
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