ボーはおそれている

 アリス・イン・ゾンビーランドにはアリ・アスター監督作の『ミッドサマー』をパクった話があって、章タイトルはそのままミッドサマーだったんだけど、あれは他のゾンビ映画のタイトル達がどうしても知名度的に(ゾンビ映画はゾンビ映画の知名度の割りにタイトルがあんまりないような気がする。ゾンビが出てくる映画のタイトルが『ゾンビ』だってこと、わりと明日使えるムダ知識だと思うんですよ。)ウケるかどうか怪しかったので、目次をTwitterにあげたときに「ミッドサマーなら知ってる! ウケる!」ってサブカルクソ野郎共が反応して宣伝効果抜群だぜ! って策略がまあ3割ぐらいあったんだけど、サブカルクソ野郎はそもそも俺のTwitterを見ていないという事実により、普通にそのまま通っていった。宣伝って難しいですね。

 次に映画をネタにした作品を書くことがあったら、果たして『ボーはおそれている』の話はするだろうか。多分話すなら『デス・プルーフ in グラインドハウス』の話も一緒にすると思う。見たときの感覚はわりと似たようなもんだから。

 まあつまるところ最後の方は面白いけど、その道中はずっと「なんで俺はお前についていかないといけないんだ……?」という思いにかられてしまうということだ。映画という媒体は一度捕まえてしまえば上映時間が終わるまではつきあってやらないといけないので、できれば道中にも面白いものを用意しててほしくて、一応ボーは用意してくれてはいる。デス・プルーフは怪しい。

 デス・プルーフの道中が退屈なのと違い、ボーは道中おかしいんだけど同時に息が難しくなる重苦しさもあって、しかもオチがチョケてるから『自殺したいという同級生の話の相談にのって、しかもそれが結構真食らってて、こいつ本当に自殺すんじゃねえかな。なんて声をかけてやったらいいのかな……って思ってたら自殺を思い立った理由が「金玉が腫れたから」だったと判明した時』みたいな、なんで俺はこいつのために気分落ち込んだりしたんだよ。という複雑な思いが発生する。しかもそのチョケの後ちょっと続くのもなんか……。『ヘレディタリー/継承』で全裸のおっさんが出てきてからもう一捻りあって、しかもそれがまた脈絡ない上にオフビートだったら困るじゃないですか。俺はさっき見た全裸のおっさんについて整理できてないんだよ。主人公の精神状態の話をされても困るっていうか。『デス・プルーフ』でハイタッチしたら即エンディングは偉かったんだよ。

 どんどん違う映画の話をするけど、主人公の内面と人生の話をする変な映画が観たいなら『スイス・アーミー・マン』の方がオススメかな。同じ監督(正確に言うと片割れがいない)の『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』じゃないからな。ボーと同じ感覚にはなれるかもしれないけど。

 ところでこの映画は結構幻想的で地に足をつけてない映画ではあるんだけど、後半に(なんかずっと後半の話してるなお前)急に初心者ミステリクラブみたいなことをし始めて地に足をつけようとしたので、その足をどうしたら切り落とせるのか暫く考えた。それやったらお前あれだぞ。名探偵役に「おいおい、そんなトリック今どき誰も採用しないぞ。双子の入れ替えトリックじゃないんだからさ」みたいなことを言われるぞ。この映画に名探偵役はいないので問題はありませんが。

サメとゾンビと空伏空人

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