『NOPE』
いつもは家の中で多くの人間が出てくるタイプの作品を撮っている監督が、ブレイクを機に予算を多く与えられた結果、とりあえず出してくるデカい物体が好きな男です。今作だと「Gジャン」かもしれないし、体験型アトラクションにあったクソでかいマスコットキャラクターの風船かもしれない。
黒人の体と白人の頭脳を合体させてDX最強人間をつくりだす映画、『ゲット・アウト』のジョーダンピールの最新作である。黄色人種はどこに混ぜたらアルティメット人間になるんだろう。
人種差別的あれこれの監督とされているジョーダンピールではあるが、『ゲット・アウト』もそうだったように、日常から湧いてくるハチャメチャが目立つ監督でもある。本作も変わらず、ハチャメチャな映画になっている。
飛行機から落下してきた物によって事故死した父親を持つ主人公は、「そんな奇跡ありえるか?」とずっと疑問に抱いており、真相を撮影するために監視カメラを設置すると、一生動かない雲の存在に気がつく。
UFO映画(作中で「UFOをUAPと言い換えた」と言うシーンがあるが、あれは正確に言うならUFOは元々「未確認飛行物体」で、正体が確認されてない飛行物体を指す言葉であり、世間一般がイメージする円盤だけを指すのではなく、ドローンとかも指す言葉ではあったんだけど、円盤イメージがつきすぎたために『UAP』という言葉に変えたのであり、円盤のことをUAPと言うようになったのではない。本作ではそんなこと言っておきながらずっとUFOと言っている。知識を自慢したいお年頃か?)なだけあって、空を見上げると「なんかいるんだけど……」みたいな円盤の影がかなりうろちょろしている。本当にうろちょろしてる。あっちいってこっちいってる。
恐いUFO映画が撮りたいという監督の言があるように、UFOが家の上に居るシーンとかは普通に恐い。しかし同時に、空をうろちょろしたり、もりもり人間を食べてるのを食道までしっかり映しているのはネタ的に面白い。
本当に食われてる人間が食道を通っているところが同人誌で断面図として描かれてるやつだったんだよ。効果音に♡がついてるやつだったんだよ。あとキラーメイズを思いだしました。
馬に鏡を見せて蹴られる人、チンパンジーを興奮状態にさせてしまい顔面を殴打される人、UFOと目を合わせてしまって食われてしまう人。だから言ったじゃん、動物には気をつけろって言ったじゃん。あいつらにはあいつらのルールがあって食われる時は食われるんだって。そんなことしたら殺処分するしかないんだから……。
かなりエンタメ。デカいUFOがお前を狙って食いに来る。多分小食なのかもしれない。そんな映画。
見るものが見られることで死ぬことに意味があるとするなら、じゃあなんで違法視聴していたあんちゃんは生きてて、見られる側だった元子役は死ぬんだよっていうのがあるので、あの映像作家は「真の捕食映像(傍から見るのではなく、食われる側の視点で撮る)という不可能(食われる側が撮影できるだけの知性がないといけないし、食う側には倫理的に問題のない化物である必要がある)を可能にしたかった」だけだと思うんすよ
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