『ブレット・トレイン』
作内において人生を『きかんしゃトーマス』で学んだ男が登場するが、どんなときもじこはおきるさほらって歌ってたことは覚えてなかったらしい。あの曲、タイトルが『じこはおこるさ』なのに歌詞は「じこがほら、おきるよ」なの、覚えづらいからやめてほしいところありませんか。
病欠の殺し屋の代わりに、新幹線の中でアタッシュケースを盗む仕事をすることになったブラッド・ピットは、思ったよりも簡単にアタッシュケースを盗むことに成功するが、入った新幹線の中にはそれぞれ目的が違うが因縁のある殺し屋ばかりが乗車していたのだった。
原作は伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』。俺は未読だったので映画を観たあと買ってきた。どうやらブラッド・ピットは主役ではないらしい。そこから?
『白い死神《ホワイト・デス》』と呼ばれるロシアからやってきたヤクザと、その命を狙う女学生を軸に、息子の敵討ちに来た男と、家族を殺されたメキシカンマフィア、ホワイト・デスの息子とその護衛を依頼された殺し屋。あとメキシカンマフィアの家族を殺した犯人と、たまたま病欠の代わりで乗り合わせたブラッド・ピットの群像劇になっている。
ホワイト・デスの腕の上でリボルバーを転がす仕草が滅茶苦茶映えてるこの映画は「運命」を話のネタにしているのか、ホワイト・デスはロシアンルーレットが大好きで運命を支配しようとするし、真田広之は「運が良ければ……」「天命……」とか言いだすし、ブラッド・ピットはただただ運が悪い。この男、格好つけてダイヤル式の鍵を手で回してみたら、なんか綺麗に数字が合ってしまって開いちゃうぐらい運が悪いのである。でも開けれるってことは運が良いってことでもあるんじゃない? まあそうだからこいつはしぶとく生き延びるし、この中で一番因縁がないはずなのに殺し屋全員と立ち向かうハメになるんだけど……。
ブラッド・ピットは本当に運が悪くて、この映画のストーリー展開は基本的にブラッド・ピットの運の悪さと、無駄に強い腕っぷしによって進行していく。
群像劇らしく、幾重にも用意された時限型爆弾的なしかけやセリフが後々に生かされていく展開は素直に面白く、この蛇はいつ来るか。さっきのセリフが功を成すのはいつか。その全てをたまたま通りかかったブラッド・ピットが悪運で台無しにするのはいつか。逆に悪運が働いて想定外の事態に進展するのはいつかワクワクしながら見ることができる。
また、PVでもあるようにこの映画はご存じ「勘違い日本情景」が広がっている。ただ、上野駅近くの高架下みたいなところとか(アメ横の近くだったか?)見たことがあるような気がする風景があるところもあったりして、「勘違いをしている」というより「その土地で見たものを圧縮して1画面におさめている」という方が正しいのではないか。という気もする。いや、東京駅はそんなキラキラ空間ではないですけど……。勘違い日本情景を見るたび、俺はたまに「こういうの、文化盗用的なあれこれで騒がれたらどうなるんだろう」と思うときがある。ほら、海外の寿司店を否定するようなあんな感じで。いや、そんな騒ぎ起こされたくないですけど。でも同時に、勘違い日本情景だヤッターケラケラケラ。でいいのかなあ? と思うときもある。いいんじゃない? そうかも……。
そんな感情がでたのはつい先日「海外の小説を日本が日本風に大胆改造した映画」こと『夏への扉』を観たからで、みんな互いに相手の文化を自分の視点で圧縮解釈するとこんな感じになるんだなあ。って考え込んだりもした。「
『夏への扉』と『ブレット・トレイン』ってそんな考え込む映画ですか?」
「全然? どっちも邦画的洋画的エンタメ映画だよ」
みんなも見ようね、急に流れてくる「上を向いて歩こう」。重要アイテムみたいな面するミネラルウォーターと一緒に。
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